あなたまでの距離
夜の街が一望出来て、流れる車たちが、流れ星のようだった。


隣で高木さんが煙草に火を点けようとしていたが、風が強くてなかなか点かない。

私が両手で風よけを作り、無事に火が点いた。

「ありがと」

またまた優しい笑顔。

この表情、たまんない。素敵過ぎ。

なんて、心の中を見られたくなくて、背中を向けて、煙草に火をつける。

展望台の柵に2人で寄りかかり、ふうっと煙を吐く。


真冬の高台、凍りつきそうな風が吹き荒ぶ。

そして、2人同時に
「寒い!」
と、思わず声に出し、笑いあった。


寒くて、煙草の味もよくわからない。


吸い終わった煙草を、ポケット灰皿に入れて、また、2人で夜景を見る。



「やっぱり、寒いねー。」



と、言いながら、私が高木さんに背中を向けた途端。

背後から彼の手が伸びて、

気付くと、背中から、強く、抱き締められた───。


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