あなたまでの距離
「高木さん…?」



心臓が、飛び出そう。



「あー…」と、小さく呟きながら、彼は私を抱き締める力を強める。


その腕に、そっと触れる。



「沙耶…」
私の右耳の側で、彼の少し掠れてる声。




やばい。心臓が、もたないー!

「何ですか?」
必死に平静を装う。




「好き…」




全身の血液が一気に熱くなる感じ。
脈拍がさらに速まる。



「あーあ。言っちゃった。ガマンできないなー。俺。」

明るい彼の声に、思わず首だけ振り向くと、彼が私の肩を掴んで、身体ごと自分の方へ向けた。



「…沙耶。」


極上の笑顔。

何て返していいか、分からずに、思わず


「あーあ、言っちゃった。」


と、真似して、笑ってみる。



「ごめん。嫌だった?」


首を傾げながら尋ねる、不安そうな彼の表情。


慌てて首を振る。


「何とも思ってないなら、毎日メールしないし、今日も来ないですよ。」



そう答える。



好き、と言おうか悩んだけど、最後の道徳心がそれを思い留まらせる。



まぁ、今更何が道徳だって感じだけど。




すると、高木さんはにっこり笑って、今度は正面から、そっと、包み込むように、私を抱き締めた。


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