リトライ。
泉ちゃんの手を引っ張って、早足で歩くと後ろから彼が何かを言っているような気がした。
知らない、知らない。
聞こえない。
「沙奈いいの?昨日の人でしょ?」
「うん、ちゃんと謝れたしいいよ……もう関わりのない人だから」
きらきらしていた。
絶対楽しい、なんて信じて疑わないまっすぐな彼とはきっと住む世界が違うんだ。
遠くを見つめて、思う。
羨ましいな、と。
きっと今まで一度もバスケをしていて苦しいと思ったことがないんだろう。
私とは違う……。
好きなものを本当に好きなれる人が羨ましかった。
「それにしても、彼……スポーツマンって感じでカッコいい人だね。
沙奈の話を聞いたらなんか強引な人かと思ってたけど……優しそうじゃん?」
「優しくないよ、楽しそうだった、なんて付き合わせといて余計なお世話だし!」
私の言葉を聞いて泉ちゃんは意味ありげに笑った。