【続】三十路で初恋、仕切り直します。






「泰菜」

バスタブの中で向かい合いつつも、正面の法資から目を逸らし顔を伏せていると、法資がいくらか辟易した声で呼び掛けてくる。

「おまえいつまで臍曲げてんだよ」
「……だって……」
「あんだけ好い声で鳴いときながら今更何ぶすっとしてんだ」

揶揄するように言われて、過ぎた快感の名残で涙目になったままの目で法資を睨む。

「……でもわたし、やだって言ったのに……」


法資にされたことも恥ずかしかったけれど、何より口では「嫌だ」と言ったくせに法資の熱い愛撫にあっけなく籠絡してすぐに気持ちよくなってしまった自分が恥ずかしかった。それで突っ張った態度を崩せずにいると、そんな心情を知ってか知らないでか法資が呆れたように言ってくる。


「おまえなあ、いい加減学習しろよ。イヤッて恥らわれると余計に燃えるもんなんだよ。隠しに隠されるとむしろ無理やり暴いて剥き出しにして弄くって舐めまくって泣かせてやりたいって思うのが男心だろうが」
「……っだからなんでそういうことわざわざ言うのよっ」

開き直る法資をひと睨みして、バスタブを満たしているモコモコの泡をひとすくいその顔に投げつけてやる。けれど思ったよりももったりしていて、泡は法資の顔に届く前に手のひらからぽてっと落ちるだけでうまくいかない。

むきになって何度もすくって同じことを繰り返していると法資に「ガキみてぇ」と笑われてしまう。



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