【続】三十路で初恋、仕切り直します。

一度目が終わってぐったりしてると「まさかこれで終わりだなんて言わないよな」と言わんばかりの法資に抱えられて、バスルームに連れてこられていた。

浴室には果実のような甘い匂いが立ち込めていて、湯が張られたバスタブにはまっしろな泡が満ちていた。

泰菜がベッドで脱力しきっている間に、意外にマメな法資がコンビ二で購入しておいたという入浴剤でバブルバスの準備をしていたのだ。


厚みのあるもったりした泡のおかげでお互いの体は丸見えにならずに済んでいる。それでもセックスの直後に恋人と対面して湯船に浸かっていることにはまだ慣れなくて、どうしても気恥ずかしかった。


「いつまでそっぽ向いてんだよ」


リラックスして湯船に体を投げ出している法資は泰菜が感じているような照れはないようで、泰菜のぎこちない態度にすこし不満そうな顔をする。


「おまえそんなに俺に食われるのが嫌だったなら、今度から自分からパンツ脱いでこっちが引くくらいあけすけに誘ってみろっての。そういう恥じらいもクソもねぇ恰好には絶対食いつかねぇから」
「……そんなの絶対お断りです」
「でもまあ今度一度でいいからおまえから積極的に誘われてみたいかな。『取って食べてください』みたいな」
「しませんから。キャラじゃないし……!」

泰菜が毛を逆立てた猫のように背を強張らせて睨むと、法資はひどく機嫌がよさそうに笑う。


今日父や紀子に挨拶している姿はさすがに年相応で、堂々と『泰菜さんを幸せにします』と言った姿には正直見蕩れてしまったけど。ふたりきりになると妙に子供っぽくなるというか、何かヤラしいことをしようとしているときなど尚のこと大人気なくなる。

法資のそのギャップにいちいち振り回されて、良くも悪くもクラクラきてしまうのが困りものだった。



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