【続】三十路で初恋、仕切り直します。
あの晩のことはほとんど記憶になくて、法資に訊いてみたこともない。だからどういう経緯で法資と事に至ってしまったのか今もよく分からないままだ。分からなくとも、状況を考えれば『酔った勢い』以外考えられずにいた。
「……違うの?」
「深酒してたのはおまえだけだろ。生憎俺はあの日素面だった。だいたい俺が飲んでたとしたら親父の店から酔ったまま車出すわけないだろ」
言われてみれば法資が飲酒運転などやらかすはずがないし、運転の可否が分からぬほど酔っていたなら店主である彼の父親が止めていただろう。
そう思えばあの日法資は泰菜に飲ませてばかりで自分は全然飲もうとしていなかった。彼が泰菜を連れてラブホテルまで運転したということは、泰菜が泥酔した後もアルコールには一切手を付けなかったということだ。
つまり法資が何を言わんとしているのか考え至るよりも先に、法資が溜息混じりに零す。
「人が好いの通り越してやっぱ馬鹿だな、おまえ。おまえは俺が計画的に酔い潰したんだよ。酔っ払ったおまえが脱いで誘ってきたってのも嘘だしな」
口が「え」の形に開いて固まる。声を出せずにいると法資がばつが悪そうに続ける。
「俺がガンガンすすめておまえに飲ませまくったことくらいは憶えてるだろ?」