ヒット・パレード



次々と質の高いパフォーマンスを繰り広げる実力派バンドの登場に、嫌が応でも会場は盛り上がりを見せる。


ステージでは《ザ・シロマニヨンズ》の演奏が始まり、ボーカルの甲友ヒロトがリズムに合わせ飛び跳ねながら歌い出す。


出演者用の観覧席には、つい先程ステージを終えたC,z の松本と布袋屋が隣どうしで席を陣取り、上機嫌でそのステージを眺めていた。


「しかし、アツイね」


「これだけのバンドが集まれば、そりゃアツくもなりますわな」


「そして、トリを締めるのがあのトリケラトプスだってんだからなぁ、テレビNETもやってくれるよまったく」


布袋屋と松本………この二人にとって、トリケラトプスは特別な存在とも言える。布袋屋とトリケラトプスはデビュー時期がほぼ同時期であり、C,z はトリケラトプスが解散した二年後のデビューである。


彗星の如く現れ、若かりし頃の二人の記憶に鮮烈な印象を刻みこんだスーパーロックバンド。そのトリケラトプスの再結成ステージとなれば、心が躍らない訳が無い。


当然、話題はトリケラトプスのステージの話に移る。


「そう言えば、ギターは誰が弾く事になったんだ?」


「聞いた話じゃ、森脇が黒田 明宏を起用したって事らしい」


どこで嗅ぎ付けたかは知らないが、布袋屋がその事を教えると松本はサングラスの奥の目を大きく拡げて驚いた。


「うわ、それホント?森脇さん、チャレンジャーだね」


「黒田は確かに上手いけど、オレだったら起用しないね」


「クラッシャーだからな、あの人は………じゃあ、布袋屋さんだったら誰を起用します?」


松本に尋ねられ、布袋屋は顎に手をあて思案してみる。


「うーーん、そう言われると困るんだよなぁ」


いっそのこと《自分》と答えようかとも思ったが、正直それも違うような気がしてならなかった。あのトリケラトプスにハマるギターは、前島 晃以外に存在しない……そんな気がして仕方無かった。



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