ヒット・パレード



「テメエ、今何て言った?」


静かだが、凄みの効いたその口調に黒田は少し慌てたように今の発言のフォローをする。


「ま、まあ前島もなかなか大したギタリストだったけどよぉ………」


だが、森脇が鋭く反応したのは、その部分では無かった。


「そこじゃ無え。お前、どうして晃が刺された事を知っている」


「あ?」


森脇に言われて、黒田ははじめて己の発した言葉の重要性を認識した。


前島 晃の死因については、森脇そして本田の隠蔽工作により世間的には急性心筋梗塞という事になっている。前島が暴漢に刺された事、そして自殺したという事実は今までどのメディアでも公表された事は無く、それを知るのは森脇らトリケラトプスの三人、そしてマスター、陽子、本田ら、いずれも森脇のよく知るのごく一部の人間だけである。


それ以外でその事実を知っている人間がいるとすれば、それはたった一人しか考えられない。




「テメエだったのか………」



そう呟きながら、黒田の方へとにじり寄る森脇。そのあまりの迫力に黒田はじりじりと後退りを始めた。


「ちょ、ちょっと待てよ、落ち着けって………」


次の瞬間、森脇の渾身の力を込めた右手の拳が黒田の顔面にめり込んだ。


その勢いで楽屋のパイプ椅子に足をぶつけながら、二メートル程後ろにぶっ飛び、仰向けに倒れる黒田。


「ぶっ殺してやる!」


その黒田の胸に馬乗りになり、森脇は更に何度も黒田の顔面を殴りつけた。その度に鈍い音をたてて、黒田の顔面が右を向き左を向く。


「やめてっ!森脇さん!」


陽子が必死に叫ぶが、もはやその声は森脇に届いてはいなかった。今の森脇の脳内にあるのは激しい怒りと憎しみしか無い。


陽子の他に楽屋にもう一人いたスタッフが、真っ青な表情で本田に無線連絡をする。


「本田さん、大変です!大至急トリケラトプスの楽屋に来て下さい!」


森脇の拳を受ける度、黒田の顔は見るも無惨に変わっていった。鼻の骨は折れ、両の瞼は腫れ上がる。口の中を切ったのか口内は真っ赤に染まっていた。



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