ホルケウ~暗く甘い秘密~
(恋人契約なんて、なんで自分で自分の首を締める真似をしたかなー、俺……)


答えはすでにわかりきっていた。

保険をかけておかなければりこに近づけないほど、自分が臆病だからだ。

しかし、今の玲はりこの気持ちがどこに向いてあるのか知っている。

ならば、もう保険は必要ではない。



(好きって言ってみるのも手かな)



頑固な彼女はなかなか信じようとしないかもしれないが。

もし、受け入れてもらえたら――――――――

そこで幸せな光景を夢想するはずが、玲の脳裏を暗い闇が過る。


『なにを隠しているの!?あたしは玲の彼女なのに!』


それは、そう遠い記憶ではない。


『あたしを見て!あの人とあたしは別人だって認めて!』


だが忘れて、いや、心の奥底に封印していた。
堰を切ったように、苦い思い出が流れ出す。


『あたしは玲を見放したりしない。だから……』


僅かに希望が芽生えた。
彼女になら、話しても大丈夫かもしれない。


今度こそ、俺は自分の居場所を……――――


“近寄らないで!気持ち悪いッ!”


ガラガラと音をたて、足元の地面が崩れ落ちていく。

ハッと気がついた時、玲は自室のベッドに横たわっていた。

そう、すべては幻想だった。


(フラッシュバックか。久しぶりだな)


たった一瞬で過去を旅していたらしい。
窓に映る自分の顔は、かなり青ざめている。

これは、もう1人の自分からの警告だ。
そう、玲は受け止めた。


(だって、あれは幻想なんかじゃない……。紛れもない、自分の過去だ)


バカなことを考えたものだ、と玲は自分を冷めた目で見つめた。

人並みの幸せというものは、人間にのみ適用されることを忘れていたのだから。

顔をあげた時、自分がとても険しい顔つきであることに、玲は気づいていなかった。


(でも俺は、まだ人間に戻れる。そしたら、今度こそ……)


近日中に、玲はホルケウのメンバーと顔を合わせに教会に出向くと決意した。
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