ホルケウ~暗く甘い秘密~


とんでもない騒動に巻き込まれたものだ。

今さらではあるが、りこはしみじみとそう実感した。

疲れが押し寄せて来ると同時に、無性に玲に会いたくなる。
玲の柔らかな声に労りの言葉をかけてもらいたい。
あの、大きくなりつつある手で、頭を撫でられたい。

幸せな妄想に浸っていたかったが、膨らみすぎた風船がパチンと割れるように、りこは突然我に返った。


(な、なに考えてるの、私…………相手は玲よ。玲。いくら見た目がかっこよくたって、年下なんだよ?)


そう、その昔女の子みたいだとからかわれていた小さい男の子、それも自分が護衛していた子にときめきを求めるのは、きついものがある。


(昔の写真でも整理すれば、変な気はおこさなくなるでしょ。玲が垂らした鼻血拭いたりした写真でも見れば……)


そう思いつき、りこは着替えてすぐに、自室の隅に置かれた段ボール箱に手を伸ばした。
東京から戻ってきて以来、まだアルバムの整理をしていないことに気づく。

2006年と書かれた、一番上に積んであったアルバムを広げ、りこは色々な思い出に浸った。


(あの頃から、あんまり友達多いタイプじゃなかったなぁ……。絢佳は私が転校した次の年にここを去っちゃったし。美佳は隣の町の高校行ってるから、週末しか会えないし……)


感傷に浸りながら、一枚、また一枚とページをめくっていたりこだが、あるページに差し掛かった時、手がピタリと止まった。


「え…………どういう……こと……?」


ある一枚のスナップ写真。
一見ただの写真だが、りこは強烈な違和感に襲われた。

混濁した頭で、うわごとのように、りこは呟いた。


「これ…………玲?」

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