ホルケウ~暗く甘い秘密~
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有原基樹は、非凡といえるほどの運動神経を持った少年だった。
野球部に入部するなり、一年生にして異例のレギュラーとなったが、それに驕ることなく、日々の自主トレーニングを欠かさなかった。
小学校中学年から日課としていた、毎日5㎞のランニングと、素振りを、その日もしていた。
金曜日、その日はいつもより早く、有原は自主トレーニングを切り上げた。
素振りをはじめてから約15分ほど、誰かに見られていることに気づいていたのだ。
(最近、学校でよく聞く不審者……?ケータイ持ってないし、いざって時は警察まで走るしかないか)
警戒していることに気づかれないように、自然な動作でバットを置くが、屈んだ有原が見たものは、今朝ニュースで話題になっていた、あの生き物だった。
音も無く眼前に現れた、一匹のオオカミ。
自分ににじり寄るその生き物の、ギラついた金色の瞳を見ると、声にならない恐怖が襲ってくる。
だが有原は諦めなかった。
ここの川縁は砂利がない。
バック走で少しでも距離を広げてから、土手を駆け上がって警察署に飛び込めば助かる。
いきなり走っても転ぶ心配はない。
一瞬の睨み合いの末、後ろに足を捌いた刹那、有原の胸に黒い影が飛び込んできた。
気がつけば、有原はオオカミに押し倒されていた。
(失敗した!)
冷静さが消え失せた瞬間、有原はめちゃくちゃに叫んでいた。
そして、さらに左右に二匹のオオカミが現れ、退路を断たれていることに気づき、パニックが頂点に達する。
そんな彼を嘲笑うように、オオカミはニヤリと笑い、前足にさらに力を入れた。
首筋に走った鈍い痛み、そのあとの朧気な記憶から、有原は悟った。
オオカミに噛まれた、と。
有原基樹は、非凡といえるほどの運動神経を持った少年だった。
野球部に入部するなり、一年生にして異例のレギュラーとなったが、それに驕ることなく、日々の自主トレーニングを欠かさなかった。
小学校中学年から日課としていた、毎日5㎞のランニングと、素振りを、その日もしていた。
金曜日、その日はいつもより早く、有原は自主トレーニングを切り上げた。
素振りをはじめてから約15分ほど、誰かに見られていることに気づいていたのだ。
(最近、学校でよく聞く不審者……?ケータイ持ってないし、いざって時は警察まで走るしかないか)
警戒していることに気づかれないように、自然な動作でバットを置くが、屈んだ有原が見たものは、今朝ニュースで話題になっていた、あの生き物だった。
音も無く眼前に現れた、一匹のオオカミ。
自分ににじり寄るその生き物の、ギラついた金色の瞳を見ると、声にならない恐怖が襲ってくる。
だが有原は諦めなかった。
ここの川縁は砂利がない。
バック走で少しでも距離を広げてから、土手を駆け上がって警察署に飛び込めば助かる。
いきなり走っても転ぶ心配はない。
一瞬の睨み合いの末、後ろに足を捌いた刹那、有原の胸に黒い影が飛び込んできた。
気がつけば、有原はオオカミに押し倒されていた。
(失敗した!)
冷静さが消え失せた瞬間、有原はめちゃくちゃに叫んでいた。
そして、さらに左右に二匹のオオカミが現れ、退路を断たれていることに気づき、パニックが頂点に達する。
そんな彼を嘲笑うように、オオカミはニヤリと笑い、前足にさらに力を入れた。
首筋に走った鈍い痛み、そのあとの朧気な記憶から、有原は悟った。
オオカミに噛まれた、と。