食べたものを吐き出す・・・

この行為を1年ほど繰り返していた私は、コンプレックスがあった頃の体重64キロから体重が45キロになっていた。

さすがに、母親が、うすうす食べ物を吐き出している事に気づき、それをさせない為に、毎日、私を外食に連れ出した。

外食であれば、吐き出すことができないだろうと考えたのかもしれない。
でも、私は、そんなのは関係なかった。

外食に出掛ける前に水分をたらふく摂取し、食べ終わるとトイレで吐き出す。
この頃は、吐き出す事に慣れて来ていたので無理をしなくても、ものの数分あれば、食べたものを吐き出せるようになっていた。

その為、長時間、トイレの便器にしがみついている訳ではないから、食べ物を一気に吐き出すと、口をうがいして、手を洗い、素早くトイレを出た。

私の右手には、吐きタコと言う、皮膚が固くなった部分がある。

それは、口に手を突っ込む時に歯が丁度当たる場所で、その部分の皮膚が固くなりタコになってしまったのだ。

それは何?と何度か母親に言われたけれど、私は美容室の仕事で使う薬品で手が荒れたと説明した。

当時17歳の、まだ成長期の私の体は、まだまだ栄養を欲していたのに、私は栄養を意図的に取らないようにしていた訳だから、当然、身体に異常が出始めたのも、この頃である。

肌のカサつきが酷く、手荒れも悪化していった。
口の中には口内炎が、いつも何個も出来て、足の裏には魚の目が数え切れないくらい出てきてしまう。嘔吐する行為で胃液をも出してしまっているので、口臭も酷くなり、メンソールの飴などが手放せない。

簡単に痩る事ができて、ストレスの発散にもなっていた、吐く習慣。これを作ったせいで最終的に私の髪の毛までも抜け落ち始めてしまう事になる。

円形脱毛症。

初めて出来た脱毛は、たしか、前頭部に500円玉くらいのものだったと思う。

その後、前頭部のハゲが治らないうちに、今度は後頭部に違う100円玉くらいの脱毛部分が出来てしまった。

隠し切ることが出来ない私の脱毛だらけの頭を、私はファッションウィッグをかぶり、隠し続けた。
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