桜の樹のように・・・Ⅴ

初めて出演したビデオは、確か男3人に対し私1人でセックスをする内容だったと思う。私は口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいの緊張の中、気がつけば、撮影が終わっていた。

撮影スタッフも男優さんも、みんな私に対して、居たせり尽くせりで接してくれる。
居心地は悪くなく、むしろ笑いも絶えず、撮影現場は、楽しかった。

私は、1週間に多いときで4本の撮影をこなし、1本あたり約20万円のギャラを貰った。荒木は必ず撮影現場に向かう前に私に、20万円を渡す。
そして、確かに20万円を受け取った領収書にサインをして、そこから、すぐ荒木に15万円を返す。
荒木は、15万円を受け取ると、私に対して受領書を渡した。

アダルトビデオに20本出演するまでには2ヶ月もかからず、私は、たった2ヶ月で荒木に借りた金は全て返済を済ませる事ができた。

そして、もう、この頃には、自分がアダルトビデオに出たと言う後の不安感もなく、手元に残ったお金で、車のローンを全額返済し、あの、忌まわしい思い出のあるスポーツカーは売却した。

「ついでに車のローンも支払っちゃえば?」

初めに荒木に言われていた言葉。

私は荒木に何か見透かされていたのだろうか?

面白いほど、金が動き、困ることなく収入が入る。

こんな暮らしをしていたのだから、AVに出演する不安や罪悪感が、いとも簡単になくなるのなんて、当たり前の事だったのかもしれない。

アダルトビデオの女優になってから、私は全ての借金を返済し、300万もの自分の貯金を作るまで・・・その期間は、わずか半年足らずだった。


< 41 / 63 >

この作品をシェア

pagetop