僕らが大人になる理由



「わ、本当に来てくれたー」

重たいドアが開き、ルームウェア姿の由梨絵が出てきた。

「仕事終わりに呼んだのはそっちですよ」

「ごめん、ごめん、入って柊人君。寒かったでしょう? あ、あと今日はお父さんお母さん帰ってこないんだー」

「え。聞いてないですよ」

「言ってないもん」

「…なんの悪気も無さそうですね…」

「ないもん」


靴を脱いで、呆れながら久々に由梨絵の家にあがると、由梨絵は俺をリビングに引っ張っていった。

相変わらず由梨絵の家は綺麗で、掃除が隅々まで行き届いている。オフホワイトのソファーはまぶしいくらいだ。

座ると、由梨絵はピタッと俺に寄り添ってきた。


「…由梨絵、どうして先に言わなかったのですか」

「だって柊人君二人きりだと絶対来てくれないじゃん」

「そうだと分かって、黙っていたのですね。じゃあ俺がなんで二人きりだったら家に来ないかまでは考えましたか?」

「……わたしが我儘言うから」

「その通りです」

「…何がダメなの。だって普通じゃん、付き合ってるんだから、そういうことして普通じゃんっ」

「由梨絵」

「柊人君のそういう所が、わたしを不安にさせるんじゃんっ」


だんだんと由梨絵の声が大きくなっていった。

俺は、由梨絵の手に手を重ねて、落ち着かせるように名前を呼んだ。


「柊人君が悪い、わたしを不安にさせる柊人君が悪い…っ」

「うん。俺が悪いです」

「そういうすぐ謝るところも嫌」

「由梨絵」

「淡白な所も、無口な所も、不安にさせるから嫌。その整った顔も、他の女が見るから嫌。嫌なのっ…」

「由梨絵」

「だってわたし、柊人君のこと好」

「そんなに嫌なら、いっそ憎んでくれていい」

「え…」

「許さなくていい。俺のことは。だからもう、由梨絵も自分を安く売るな」

「何、言ってるの…?」

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