僕らが大人になる理由


「由梨絵、俺は由梨絵の全部を背負って、一緒に生きていきます」

「っ」

「そう、決めました。それは今も変わっていません。由梨絵が望むまで、ずっと一緒にいます」

「なんで…?」

「え」

「なんで、わたしにそこまでしてくれるの…?」

「………」

「まさかこんな性格になったのは、自分のせいだとでも思ってるの…?」


由梨絵の言葉に、俺は胸のどこかが一瞬ひやっとした。

彼女の手は変わらず震えていて、手を重ねても、止まらず、温かくもならない。


「知ってるよ、わたしは血の繋がりのない娘だってことくらい…」

「え…」


――予感が的中してしまった。

頭の中が、一瞬真っ白になった。

知っていた? いつから? どうして?

嫌な汗が、全身から噴き出した。

由梨絵は、さっきとは逆に、とても冷静に話し出した。


「わたし一回、柊人君に当たったことあるよね? 柊人君が来たせいで誰もわたしを見てくれないって…」

「……はい」

「あの時よりずっと前から知ってたよ。深夜にリビングで3人が話してるの、偶然聞いちゃったんだ」

「え…」


そんなに前から…?

あの時由梨絵は、ドアの向こう側にいた…?


じゃあ、一体どんな気持ちで、それを聞いたのだろう。

たった、1人で。


「柊人君が、罪意識でわたしに優しくしてくれてることも、それを利用して一生わたしに付き合わせることもできるって、分かってた」

「………」

「分かってたから、利用した。心を満たすために、穴を埋めるために…」

「由梨絵…」

「でも何も満たされなかった、穴は開いたままだった…っ」


ぽろぽろと、由梨絵の涙がふたたび俺の頬に落ちてきた。

…胸が、引き裂かれるような思いだった。
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