彼の腕の中で  甘えたくて
私は赤ワインよりも白ワインが好きだった。

京也と甘く交えた夜はいつだって飛び切り美味しい白ワインがグラスの中で揺れていた。

あの琥珀色の液体は私をしっとり酔わせて、私の中に彼をしっかり捕らえて離さず狂うほど感じさせて、ワインに惑わされた私を彼がさらに震えさせて痺れさせた。

時々スパークリングワインも楽しんだ。

私はいつも思っていた。

こんなにうっとりするように素敵な色があるなんて、と。

ストッキングがこんなシャンパン色だったら履くたびにうっとりしちゃうのに、と。

以前企画したシャンパン色のストッキングはどこの店舗でも品切れで、自社工場のストッキングのラインはあの当時パンク状態だった。

今は少し落ち着き、ルートもスムーズに流れ、品切れ状態は回避できたが、この年末に向かって再び品薄になってきた。

製造ラインを大幅に増やして在庫を確保した。
 
シャンパン色の糸には細かいラメ糸を織り込んで私の考えるイメージに近づけた。

「シャンパーにゅ」は1足2000円でも飛ぶように売れた。

私のこの初めての企画が商品化されたのは半年前だった。

そして今回の出張は、ワリナリーの里で地場産業つまり地元の物産展が開催されると聞き、次なるヒット商品を考案すべく足を運ぶことになった。

私は週末京也といつも通り過ごして、彼に大方の地理を教えてもらった。

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