彼の腕の中で  甘えたくて
ショーは大成功だった。

モデルたちは新作「ワインな御魅脚(お・み・あ・し)」をその長い脚にピッタリと貼り付けてステージを闊歩し尽くした。

ストッキングを引き立てる為に、上半身は全員が黒いブラを身に付け、様々なデザインのシースルー地のランジェリーを羽織っただけだった。

同じストッキングがモデルによって全く違う表情を見せた。

同時発売の「スパークリングしましょ!」は同色にラメ系を散りばめたストッキングだ。

こちらも完璧だった。

現場担当の前原主任はショーの後、私をステージに呼び寄せてこう言った。

「森田主任、いかがでしたか?ショーは?」

「パーフェクトだったわ。凄腕ですのね?」

「僕はあなたに満足してもらえれば、後はどうでもいいのです。クリエイターは常に相手のクリエイターしか眼中にないのです。」

「このショーにいくら費かったかは私に言わなくていいですから。知りたくないんです。」

「あっはっは、来期も僕が担当しますよ。楽しみに待っています。」

「では、私は社に戻りますので失礼します。」

「森田主任、もしよろしかったら今夜飛び切り極上の赤ワインをご馳走しますよ。定時に社のロビーで待ち合わせましょう。では、後ほど。」

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