悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


まだ徳力は顔を出していないか。



暫くソファーに座って待っていると、
何やら外が騒がしくなってくる。



そして先ほどの二階堂理事長の声が響く。




ガチャリっと音を立てて扉が開いた時、
徳力神威がようやく姿を見せた。



徳力を俺をチラっと見ると興味すら失せたように
また付き添いと二階堂を見つめる。



「こちらが同じく今日から当学院に転入される朱鷺宮涼夜(ときのみや すずや)君。
 朱鷺宮君とも同じクラスになります。

 当学院は中等部・高等部の一貫教育。

 お二人は外部転入生としての紹介として先に教室で自己紹介を終えた後、
 共に入学式へと参列していただきます。

 
 さてっ、付き添い頂いた保護者の方はここまで。

 徳力君、朱鷺宮君ともに担任の先生が迎えに来るまで
 隣の部屋で待っててください」



そうやって俺を徳力に紹介する二階堂。


促されるままに次の扉を開けて担任が来るのを待つ。



その空間に会話は一つもない。
重い空気だけが張りつめている。



暫くすると戸村と名乗る年輩の男性が俺たちの前に姿を見せる。




「私が君たちを受け持つ戸村だ。
 宜しく頼む。

 まずは朱鷺宮。

 宮家に繋がりし方が宮の指定校に通わず、
 何故に、この学院を選ばれたかはわかりかねるが、
 宮家のものとて、私にとっては一生徒に過ぎぬ。

 それだけは、朱鷺宮も忘れぬよう」


「構いません」




いきなり釘を刺すように伝えてくる戸村。


俺だって宮に縁があるからと言って
最初から特別待遇を求めたことはない。

抗議するようにきっぱりと言い切る。


「そして徳力。

 早城の甥子らしいな。

 騒々しい一年になりそうじゃわい。
 精進せよ」



戸村はそう言って徳力を見つめた。




早城の甥子……。



そうか……ここはアイツの関係者が通ったことがあった学校。
そう言うことか……。


そのまま戸村に連れられて案内される教室。


かったるい入学式。

その時間も俺が無意識に追いかけるのは徳力の存在。



転校初日、一発目。


生神として生息した徳力を知る村の奴とアイツは再会したらしく、
教室内が騒動に包まれる。


徳力は何を言われても黙ったままで次第に、
奴らのターゲットは俺へと変わってくる。



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