悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~

3.二人の転校生




翌朝、早々に目が覚めた俺は
遠足前のガキかよっと
俺自身の行動に苦笑しながら目覚めた。


いつもと変わらない日常のはずなのに、
何故か眠れぬまま、朝を迎えた入学式。



目覚ましが鳴る前に目覚めて、
ベッドを抜け出すと、
着慣れた神前悧羅のライラックの燕尾服とは違う、
もう一着の黒っぽい制服へと手を伸ばした。



ストライプのカッターシャツ。

黒のダブルジャケット。

そして校章らしきものが刺繍された
赤のネクタイ。



真新しい制服へと、
袖を通す、それだけなのに
今日の俺は、鼓動が高鳴っていた。


飛翔が仕事の都合上、
最上階にいるのは俺だけ。


登校の準備を済ませると
朝食を食べに、
階下の早城の家へと尋ねる。




チャイムを鳴らすと、
中から声が聞こえて、
早城のおばさんが、
姿を見せて招き入れる。





「おはよう。

 神威君」

「おじゃまします」





飛翔の義父母のみ、
この家の中では俺を当主として呼ばないように
飛翔に言いくるめられているみたいで、
最初の頃はぎこちなかった俺の呼び方。

七年の月日は、
それを神威君として落ち着かせた。




「えぇ。
 懐かしいわね。

 あの子が通ってた高校の制服を
 また見る日が来るなんてね」



おばさんは、
真新しい制服に袖を通した俺を
懐かしそうに見つめた。



お辞儀をして早城家の中に
あがりこんだ
俺の視界に飛び込んできたモノ。





「って、なんでお前がそこにいる」




昨夜から仕事続きで、
今日も夜までまともに帰れないはずの
飛翔が、テーブルの前で新聞を広げながら
ブラックコーヒーを口元に運ぶ。



俺はツカツカとアイツのテーブルの
傍に向かってその場に座る。

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