悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


「飛翔、お前さ病院は?」

「終わらせた。
 神威の入学式だ。

 呼び出されることもないだろ。
 
 嵩継さんと院長には
 念押ししておいたからな」
 
 

しれっとした口調で
今も新聞から視線を逸らすことなく
話す飛翔。



アイツが読む新聞を掴み取る。



「おいっ」

「ったく、朝っぱらから何歳の親父だよ。

 てめぇ、そんなんだから
 李玖さんと進展してねぇんだろうが」


照れ隠しに怒鳴る俺。


李玖さんは、飛翔と同じ病院に勤める
看護師さんで、何度か二人で過ごしてる時間を
目撃したことがある。



李玖さんの名前を出した途端に、
飛翔が吹き出しそうになりながら、
必死に体制を取り繕っていった。



俺流の楽しみ方。



ようやく落ち着いた飛翔は、
また何時もの様子で、
俺を見つめながら切り返した。



「くそガキっ。

 いいから、
 黙って席について飯を食え」




今朝もお決まりの毒づきかよ。




テーブルに並べられるのは、


・赤飯
・味噌汁
・煮魚
・酢の物
・サラダ
・漬物
・小鉢に入った、煮しめ。





待てよっ、
朝からこのボリュームかよ。


加減を知れっ。






「神威くんが新生活を始める日だから、
 おばさん、奮発しちゃった。

 お祝いごとには、
 お赤飯は付き物でしょ?

 苦手だったかしら?」





さぁ、召し上がれ~と言わんばかりに
テーブルいっぱいに並べられた朝食を
ただ見つめて、声に詰まった。






祝い事には、赤飯。




そんなことも、
ここに来てから学んだものだった。


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