悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


途中何度も、
警察官に職質されながら。


怠い体は、
話すことさえ億劫にさせて
心配した警察官は、
マンションまで
パトカーで送り届けた……。


帰宅した俺の姿に
受付の奴らは慌てていたが、
一言も話さずエレベーターに
乗り込んだはずなんだ。


最上階に続く、
エレベーターへ。



そこで……
誰かの声が聴こえた気がした。







『神威っ!!』






その声は俺が良く知る声で、
飛翔が信頼している
下の階の住人。




……鷹宮か……。





居場所に推測がついた俺は
少し安心したように、
再度、ベッドへと体を沈めた。





ふと、ドアが開かれる。





「気が付いてらっしゃいました?」



私服姿のその人は、
花瓶に花を抱えて、ゆっくりと入ってきた。

そして病室の電気をつける。




「確か……」

「ご無沙汰しています。
 塔矢です。

 今、先生呼んできますね」




塔矢李玖(とうや りく)。

鷹宮で働く看護師。
そして飛翔が心を寄せる女性。


とっとと結婚すりゃいいと思うのに、
アイツは何を考えてるのか
李玖さんとの結婚をする気はない。



何を考えてるわけか
わからないわけじゃない。



多分……
あの二人の結婚の障害になっているのは、
俺の存在が原因だと思うから。





病院の布団をかけなおして、
軽く目を閉じた時、
再びドアが開く音が聞こえた。





「李玖、すまない」

「いいえっ。

 神威君、目が覚めて良かったですね。
 では、私はこれで」

「あぁ」



病室の入り口付近で
何やら会話をしている気配があって、
扉が閉められた後、
ゆっくりと侵入してくる足音。
 
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