悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence
チクショー。
何度か、少女に体当たりを試みようとするものの
俺の体はすり抜けてしまって、感触が得られない。
ベッドの少女は今も眠ったままで、
部屋に居る啓二は時間が止まってしまったかのように、
同じ体制のまま一歩も動くことはない。
神威が必死に抵抗している姿を見ながら、
俺は精神を集中させて、兄貴の護符に手を伸ばす。
*
兄貴……力を貸してくれ。
……雷龍翁瑛……。
*
目を閉じたまま、ただひたすら言葉を繰り返し続けると、
俺の中に突然、稲妻が落ちてきたような衝撃と轟が聞こえた。
意識を奪われそうになる中、
その不安定な意識の中で『宵玻 招来』っと
懐かしい兄貴の声が響いた気がした。