悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

19.護符の力 -神威-




紅葉と名乗った少女に、首を絞められてしまったボクは
必死に抵抗しながら、指先に気を集めて、何度も何度も精神を集中させながら
雷龍翁瑛の召喚を試みるものの、思うように行かない。


そんな中、突然雷の轟と共に稲光が飛翔の体の中へと吸い込まれていく。



ボクの首を絞めていた少女の手が緩んで、
紅葉は飛翔の方へと空中を移動して、再び真っ白い両手で首をしめはじめる。




飛翔は首を絞められながらも、必死にお父さんから託されたと言う護符を
指先に挟んで、持ち上げながらゆっくりと息を吹きかけた。


吹きかけた途端に、今度は金色の雨が何時かのように降り注いでいく。


息苦しい呼吸も次第に落ち着いて、飛翔の首を絞めていた少女も
何時の間にか何処かへと消えてしまっていた。




金色の雨が降りしきる中、
ボクは手に浮かび上がる刻印を見つめる。





……久しぶりだ……。



そんな優しい力に抱かれるボク。






飛翔の体から金色の眩しい光が、抜けるように天へと還っていく。






傾いた飛翔の体を、ボクは駆け寄って慌てて支えようと頑張るものの
ベッドの上に一緒に倒れ込んでしまった。




それと同時に、全く動かなかった時間が再び動き出したように
啓二がボクたちを気遣う。



「あのぉー、どうかされましたか?」

「すいません。
 飛翔を車まで運んでいただけませんか?

 調査の途中で倒れてしまったみたいです。

 こう言うことは良くあることなので、
 それでいつもボク、ついてまわってるんです」


そう言いながらあの男に飛翔を抱えて貰って、少しでも早くこの場所から離れようと試みる。



あの場所には、雷龍の加護が降り注いだ。


だからもう、
あの場所に紅葉と言う存在が直接近づくことは出来ない。




それよりも今は、飛翔が心配だった。



飛翔のポケットの中から車の鍵を見つけ出すと、
助手席のドアを開けて、飛翔を運びこんで貰う。

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