悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

「見ても宜しいんですか?」 

「あぁ」



了承を得てゆっくりと開いた先には、
少し古くなった写真が1枚。



写真の中には、夫婦らしい二人。
腕の中の小さな赤子。


そして……中学生くらいに見受けられる
男の子が一人。



家族写真らしき一コマが切り取られていた。




「飛翔……。

 この赤ちゃんは飛翔なのですか?」




写真を見つめながら問いかけると私の手から、
そのアルバムを抜き取って静かに見つめた。




黙って、写真に視線を向ける飛翔を見つめながら
覚悟を決める。



この先の飛翔に踏み込むのは中途半端な気持ちでは出来ない。



いつも心を装って、クールに過ごし続けるその陰に潜む
大きなパンドラの存在に気が付きながら今日まで近くで一緒に歩いてきた。



そんな私だからこそ、
踏み込みたい気持ち。




そして……パンドラをこじ開けた後の飛翔が、
不安で……今も見守りつづけようと逃げ腰の私自身。




二つの私と向き合う。






心の中に、
警笛は静かに鳴り響く。





心を道を歩むことを決めた私だからこそ
気づける……シグナル。



覚悟を決めて深く深呼吸すると、
ゆっくりと口を開いた。





「話してください。
 今、貴方が心に抱くすべてを」






ゆっくりと……諭すように、
そして逃げられないように
最大の圧力を持って告げる言葉。



貴方の傷を抉る雨に私がなりましょう。



貴方が楽になれるなら。




それが親友(とも)として
私が貴方にしてあげられる唯一。


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