捨て猫にパン
だって。


“好き”をくれた倉持さんの恋は、やっぱり一時の感情かもしれない。


『捨て猫は飼えない』って。


一晩で返されちゃうダンボール箱に、お情けのパン。


そんな不確かな恋に、あたしは走れない。


慣れない人の手の中で震える猫にはなれないよ…。


───ピンポーン


玄関のチャイムに、あたしは笑って陣に、


「おかえりなさい」


って、言う。


「ただいま」


って、陣はキスをくれる。


これでいい。


委ねた未来は、間違いじゃない。
< 112 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop