捨て猫にパン
「君、真琴ちゃん、さ。こっち座って」


トントンされたソファーの隣にちょっと戸惑ったけど、倉持さんの横に着席。


タバコに火をつけた倉持さんは、裾の短いスカートをチョコンとつまんだ。


「コレ、会社出社用?」


「え…ハイ」


「こんな短いスカートはいて、ペラペラのうっすいパンツじゃさ、襲ってくださいって言ってるようなモンだよ?」


「ごめんなさい…」


「何てゆーか。中に短パンでもはきなさい」


短パン…ですかっ?


「って冗談。パンツスーツにしたら?」


「背が…小さいので似合わなくて…。パンツスーツなんて持ってないし…」


「何でもいいからはきなさい」


「ハイ…」


「あと。助けてくれたからって、誰もいない部屋に易々と見知らぬ男を入れちゃいけないな。オレみたいな善人とは限らないよ」


「はぃ…」


「襲われたきゃ別だけど」


うっ…。


笑ってる切れ長の目が少しイジワル…。


あたしはちっちゃい体を更に縮めて俯く。


「ホラ。電車の中でもそうだった。俯くと細い首、うなじが丸見え。オヤジ、そそるよ」


…ん。


ショートボブだから隠しようがない…。


でも、とりあえず。


「…ごめんなさい」


「謝ることもないけど。悪いのは痴漢だから、さ」
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