捨て猫にパン
「つーか、さ。誰にも言うなよ?俺は、その…真琴だから言ったんだからなっ」


「ハイ、ハイ」


「うわっ、上から~」


「フフッ…♪」


お酒のせい…カナ?


陣主任がちょっとかわいいかも。


他愛のない会話に夏の匂いを含んだ風が小気味良い。


駅まで着いて、


「では、また明日」


って、陣主任を振り返ると逆方向のはずなのに、あたしの方へついて来る。


「主任?」


「送るから」


「えっ!いいですよー。1人で帰れますっ」


「あのなー、痴漢話されて、ここで別れろって?電車はともかく、駅から家まで歩いてる間に何かあったら俺の責任だぜ?」


「フツーに考えて、ナイです」


「真琴って自己評価低過ぎ。オマエ、マジでいつか誰かに襲われるぞ」


「陣主任に?」


「オマエなぁ~」


「送りオオカミ」


「かわいくねぇ…」


短い髪に手をやって頭を掻く陣主任は、あまりお酒に強くないせいか、ほんのり赤みのさした顔でちょっぴりふてくされる。


スキだらけの上司ですな(笑)。
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