捨て猫にパン
「…っ…っ…!」


「真、琴…?」


「じ、ん…」


───ぎゅう…


陣の素肌があたしを縛ってくれる。


心の風船が飛ばされないように、割れないように、優しく、切なく。


「真琴」


「ばい゛…」


「…?」


「……?」


「真琴、声、聞かせろよ?」


「何でずが?陣じゅに゛ん゛───!!」


絞り出すように出た声は、自分でも聞いたことがないようなガラガラ声。


「プッ…」


「陣じゅに゛ん゛っ!ご、声がでばぜん゛…っ」


「何だよ?その声」


「………っ」


「真琴さぁ、喘ぐの、いつぶり?」


「い゛じわ゛る゛っ!」


「ハハッ!笑える-。真琴、感じ過ぎじゃね?」


「も゛う゛っ、知ら゛な゛い゛っ!」


「プッ…。真琴はさ、そーやって怒ってろ。笑ってろ。俺にぶつけろ。でもさ、泣くのだけはカンベンな。俺、何が理由でも、オマエの涙は見たくねぇから」


「陣じゅに゛ん゛…」


「ハハッ。ダメだな、こりゃ。俺、のど飴買ってきてやるよ。ただし、ケータイ、没収な」


───ピンッ


泣いた上に声も出ないあたしのおでこにでこピンした陣は、ちょっといたずらっぽく笑って素早く着替え、部屋を出て行った。
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