捨て猫にパン
あたしはうがいだけでも良くならないものかと洗面所へ行き、喉を潤してみる。


シーツをはがして鏡に映ったあたしの体は。


陣のキスマークがあちこちに散らばってて。


こんなに愛されたのに…ヒドイ顔。


ベッドに戻ってシワになった服を持って、シャワーを浴びた。


すっかり髪も乾かしてメイクも終わったのに、陣はなかなか戻ってきてくれない。


部屋で身支度、かな。


あたしはテーブルの上の冷えたあんまんにかぶりつきながら、陣の言葉をリピートする。


“笑ってろ”…か…。


そうだよ、ね。


何もない、なかった影を追うより、あたしは陣に寄り添っていればいいんだ。


今を陣と。


明日を陣と。


そう重ねて紡いでいけば、幸せはすぐそこ。


笑っていよう、陣と。


未来を見よう、陣と。
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