LAST SMILE


★亜貴Side



―行かない―







3人で、集中治療室に入る。


中心にあるベッドに
横になっている祐兎を見つけた。




「何かあったらすぐに呼んでください」


「はい。ありがとうございます。
 あの・・・」



看護士にそういわれ、
俺は口を噤んでから、


それから看護士を見つめた。



「外にいるあいつ・・・。
 藤堂麗華っていうんですけど、
 あいつのこと、見ててやってくれませんか?」



「ええ・・・。勿論。私でよければ」



看護士はにっこり笑って部屋を出て行った。








-行かない-








麗華は驚くほど冷たい声でそう返事をした。




誰よりも、祐兎の無事を祈っていたのは
麗華なはずなのに、




麗華は、きっぱりとそう返事をした。






たぶんきっと、怖いんだ。



だから、足が動かないだけなんだ。



あいつ、崩れなきゃいいけど・・・。





きっと、ICU自体がダメなんだと思う。



あいつの兄、奏磨さんの最期も、



確か、ICUだったから・・・。





俺らが近付くと、
祐兎はゆっくりと目を開けて



俺らを順に見ていった。






「あーあ。まぁ。なんだ?
 悪ぃな。たけし、祥吾」





「・・・なんだよそれ」



真二が静かにそういった。


顔は安心したような表情だけど、
目が笑ってない。



祐兎は相変わらずの意地っ張りで、
何でもなさそうに振舞う。




「はは。怒るなって。
 俺なりに気を遣って・・・」





「何が気を遣ってだよ!?
 そんな余計な気ぃまわしてんじゃねぇよ!!」



「真二。やめろ。
 そのへんにしてやってくれ」



「亜貴は黙ってろよ!」




俺は真二をじっと見つめて黙った。



そうだ。



こいつらにだって言い分はある。




黙ってられることが、どれだけ腹立つか。




知らないっていうことが、
どれだけ悲しいか。






それは、この2人にしかわからない。




「てことでさ、俺、もうダメみてぇだわ。
 余命宣告も今日までだったし。
 

 つうことでさ、俺・・・」









-バンド、やめるわ-












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