LAST SMILE



祐兎が小さくそう呟いた。


「祐兎・・・?」


「お前が泣いてたら笑わせてやりたくなるし、
 お前が困ってたら助けてやりたくなる。
 

 お前がいなくなったら、
 勝手に体が動いて探しにいっちまうし・・・。
 


 俺は・・・お前と離れたくねぇんだ」







「祐兎・・・」


祐兎はさらに強く抱きしめた。


「死にたくねぇ。
 お前らともっとバンドだってやりてぇし、
 お前にまだ・・・言いたいことも言えてねぇ」





祐兎が震えているのが分る。




こんな祐兎、はじめてみた。




こんな、こんな切羽詰った祐兎を・・・。







「祐兎、大丈夫だよ。祐兎は死なない。
 祐兎の親は確かに亡くなってしまったけど、
 あんたは死なない」





あたしは静かにそう呟いた。


あたしも、腕を回して
そっと祐兎を抱きしめる。



「死なないって、言ってくれたじゃん。大丈夫だよ。
 年明けからも、バンドできるし。
 あたしも、言いたいことがあればいつでも聞くよ?」



「麗華・・・」



「だから・・・」





あたしが言いかけたとき、
祐兎が咳き込んだ。



びっくりして体を離そうとするあたしを、
祐兎は強く抱きしめなおしてとめた。



「祐兎、咳してる。危ないから・・・」



「嫌だ・・・」



「祐兎」




「大丈夫だ。今は大丈夫なんだ。
 だから、離れんなよ・・」





こんな祐兎、知らない。


あたしの知ってる祐兎はもっと


強気で、


生意気で、


明るくて、


前向きで・・・。



だけど今目の前にいる祐兎は、

弱々しくて・・・、

怯えてる。



「今離したら・・・
 もう会えない気がして・・・」


祐兎は小さく呟いた。



「大丈夫。明日も明後日も、
 いつだって会えるよ?
 どこにいたって、
 呼んでくれればすぐに行くよ?」










本当だよ?





あなたが呼んでくれれば、
あたしはどこへだってとんでいく。






あたしが、そうしたいから。






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