Wednesday ☂
「あ、あの…沙綾ちゃん!ちょっといいかな?」
かばんに手をかけたわたしを、呼び止めたのは同じ班の吉瀬さん。
「うん!大丈夫だよ」
「よかった、話したいことがあって…」
吉瀬さんは場所を気にしている様子で、わたしたちは人気の少ない渡り廊下に行くことになった。
「あの、ね。
今度の遠足に行く前に話しておきたかったんだけど…」
静かに話し始める口調は穏やかで女の子らしい。
それに、ふわふわに跳ねたボブヘアーは可愛くて…なんだか癒し系だなぁ。
そんなことを考えているうちに、吉瀬さんは色白の肌を赤くしていた。
「えっ!ど、どうしたの…?」
「ッわたし、…その、
有村くんのことが…ずっと気に、なってて…」
「へ、っ…有村くん……?」
「きっと、こんなチャンス…もうニ度とないから…!」
わたしに伝えるのにも、きっとすごい勇気が必要だったんだろう。
必死に言葉を繋げる吉瀬さんに、頭を整理させていく。
「だから…協力、してほしくて…あの…言っちゃったの!ごめんね!迷惑だよね!」
「あっ違うよ!迷惑なんて…で、出来ることはするよ!?」
「ほ…ほんとにっ!?
ありがとう沙綾ちゃん…!」
目を潤ませていた彼女のお願いを断ることは出来ないし、
…ほんとに有村くんのことが好きなのが伝わってきたから。
協力、してあげるべきだよね…
華凛と有村くんがお似合い、なんていうのはわたしの想像だし…
確信がないことに人を巻き込んじゃダメだ。
「やっぱり沙綾ちゃんに話してよかった…
あっ!わたし千代って言います!吉瀬千代です…って、ごめんね!
普通は自己紹介が先だよね!」
焦る吉瀬さん…いや千代ちゃんはなんだか少し、わたしに似てる気がする。
…仲良く、なれそう。かな。
その後も、早口で話続ける千代ちゃんに笑っていると
後ろに見える教室から由紀ちゃんが出てきた。
「沙綾、ここにいたんだ。」
「あっごめんね。ちょっと話してて、」
「そっかそっか
俺がいちゃアレだよな、教室で待ってようか?」
「いえ!大丈夫です!っわたしもそろそろ部室に行かなきゃ…
沙綾ちゃん、ありがとう!また明日ねっ!」
パタパタと走り去っていく彼女の後ろ姿を追いながらも、
待っていてくれた由紀ちゃんにお礼を言って、
今日も1日 学校生活が終わった。