マーメイドの恋[完結]

車の中で伊原にそう言われた。


「うん。それがいいね」


マンションの前でキスをした。


「また電話するから」


「うん。おやすみなさい」


バタンと車のドアを閉めると、伊原はすぐに走り去ってしまった。


伊原との恋愛は、不倫のそれと似ている気がした。
夏子からは連絡できない。
できないわけではないのだが、してはいけない雰囲気を伊原から感じ取ってしまうのだ。


以前独身の男と付き合っていた時は、夏子の方からもメールや電話をした。


メールやLINE、伊原とはしない。
伊原がすると言わないからだ。


ただ、伊原からの連絡を待つしかないなんて、不倫と変わらない。
これはなんだろうと夏子は思った。
伊原に女がいる気配がするからだろうか。


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