マーメイドの恋[完結]
ステーキ専門店を出てから、バーも近くにあると言われて歩いていた。
夏子は、なんとなく違和感を覚えた。
その違和感の正体はすぐにわかった。
伊原が手を繋いでくれないからだ。
天神付近では、手を繋げないということなのか。
これもまた、誰が見ているかわからないからということだろう。
「ここだよ」
5分くらい歩くと、バーに着いた。
中に入ると、マスターと伊原が目で合図したような気がしたのは、夏子の気のせいだろうか。
普通は気にならない小さなことが、何故こんなに気になるのだろう。
それは、伊原が謎過ぎるからだ。
そんなわけのわからない男とは、付き合わない方がいいのだと、わかっているのだが、夏子はそんな男にハマるタイプだったということなのだろう。