先生がくれた「明日」
跡部、という表札のある部屋の、インターフォンを鳴らす。

でも、誰も出る様子はなかった。


私は、ドアの前にぺたっと座り込んだ。


ここに来たのは初めてだ。

言われてみれば、いつも先生は、私に手を差し伸べてくれたけれど。

私から、先生を訪ねたことは、一度もなかった。


結局、私は先生に頼るしかないんだ。

先生に頼っても、今回ばかりはどうにもならないと分かっているくせに。

その優しさに触れたくて。

笑顔が見たくて。

温もりを、分けてほしくて。



先生、私は結局、ずっと先生のことが好きだったのかもしれないね。

あの寒い夜から。

ううん、それよりもっと前から。

先生に、いつだって救われていた。

その救いの手に、甘えたかった―――


そうすることができたのは、先生だけだったんだ。



ねえ、先生。

早く帰ってきて。


ここからもう、立ち上がる気力もなくなってしまった私の手を引いて。

立ち上がらせてほしい。


先生の言葉なら、届くよ。

どんな陳腐なセリフでも、きっと。

空っぽの心を、満たしてよ、先生。

満たしてやれないなんて、言わないで―――
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