遅咲きプリンセス。
菅野君には少し待っていてもらい、長蛇の列となっているレジ前に、私もそっと並ぶ。
とはいえ、なかなか列が縮まらず、それはおそらく、お客さん1人あたりの購入個数が多いためなのだろう、少し待ってもらうつもりが、だいぶ待たせることになってしまいそうだ。
仕方なしに、手に持っているマスカラのパッケージや宣伝文句を、じっと読みふける。
と。
「ここ。俺が考えたコピー」
いつの間にか菅野君が隣に来ていて、マスカラの小さなパッケージを覗き込み『彼女につけてあげたい!』という部分を指で指した。
そしてさらに、私の手からマスカラをするりと抜き取った菅野君は、裏の説明書きの部分を指でたどり、ある部分で止めると、こうも言う。
「ここの、付け心地が軽い、って部分は、鈴木の意見を参考にしてみたんだ。やっぱり鈴木みたいに目が重く感じる子も多いみたいでさ。まあ、当社比だから、あんまりアテにはならないかもしれないんだけど、この間の試作のときよりは、ちょっとは軽くなったと思う」
「え、でも、私の意見は求めてないって……」
「ああ、あれはウソ。油断させて本音を引き出す作戦だった。鈴木は絶対、否定的なことは言わないのは知ってるし、塗って一番最初に口にしたのがきっと本音なんだろうな、って」
「……、……」