遅咲きプリンセス。
 
なんともまあ、よく分かっていらっしゃる。

菅野君が指で示している部分を凝視したまま、恥ずかしさと嬉しさで顔が上げられない。


商品の意見を出し合うときは特にだけれど、どうしても私は“この商品のここがダメ”だとか、商品自体に“需要はないかも”という否定的な意見が言えず、よく、そこを指摘されるのだ。

つい先日も、小林さんに怒られた。

彼女は、仕事となるととても厳しい……。


「あ、そろそろレジの番じゃん? 俺はメイクルームのほうに行ってるから、鈴木も来て」


すると、私の手にマスカラを戻した菅野君は、そう言って本当にメイクルームへ向かった。

菅野君が言った通り、レジの順番待ちは私の前に2人となっていて、先の人は、すでに店員さんから可愛らしい袋を手渡されている。


しかし、疑問が一つ……。

なぜメイクルームに?

けれど、マスカラのお会計をしてもらっている間に、菅野君はさっそく付け心地を確認したいんだと唐突に閃いた私は、店員さんにメイクルームを使う旨を伝え、そちらに向かった。

が。


「じゃあ、塗るわ」

「あ、あの、菅野君……?」

「なに?」

「なに、って。なんで一緒に入ってるの?」
 
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