桃の花を溺れるほどに愛してる
「うまそーじゃん」


 バッと顔をあげると、貯水槽の置いてあるスペースから金髪の1人の男子生徒が飛び降りてきた。

 ……金髪?
 それに、この声ってまさか!


「聖くんっ?!」

「うわー、マジでうまそー。これ、神代センパイの手作り?」

「まさか、今の話、聴い……」

「卵焼き、もーらい」

「あっ、ちょっ、コラ!」


 私の話に耳を傾けていない様子の聖くんは、私の弁当箱の中の卵焼きを1つ手に取り、自分の口の中へと放り込んだ。


「うっめぇ!」


 ……褒められるのは、別に悪い気はしないんだけどね。


「んー、でも、卵焼きはもっと甘い方が好きかな。今度からよろしく」


 ……キレてもいい?

 なんなの?!いきなり現れたかと思いきや、味付けを注文してきたんだけど……!私、アンタのために弁当を作ってきているわけじゃないんだけど?!


「……神代センパイ?」

「口に合わないようなら、食べなければいいんじゃないのっ?」

「は?だれも口に合わないほどマズイなんて言ってねぇだろ。俺はもっと甘い方が好きって言っただけ」


 それは、そうだけど……っ!


「……気が向いたらね、甘い卵焼き」

「マジで?!やったー!」

「期待はしないでよ?!」


 無邪気に喜ぶ姿からは、京子からの情報とは無縁のような気がするけど……。
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