桃の花を溺れるほどに愛してる
「聖。いいのか?こんなに頼んで」


 桐生さんは無表情のまま、聖くんに話し掛けた。

 あっ、聖くんと桐生さんって、知り合いだったんだ?

 しかも、真面目な桐生さんが敬語ではなく、タメ語で聖くんに話し掛けている……もしかして、仲良いのかな?


「いいんだよ。俺は何も困らないし」

「……確かに、そうだが」

「あのバカ、あんたらに迷惑ばっかりかけているだろ?だからこれくらいはトーゼン」


 ……?

 なんの話をしているのか、私にはさっぱり分からないんですけど。


「聖くん……?」

「んぁ?あっ、ああ……。まぁ、別にセンパイになら言ってもいいかな?」


 ちらっと桐生さんの方を向いた聖くんだけど、桐生さんは相も変わらず無表情のまま、言った。


「俺に聞くな。自分で決めろ」


 わっ、なんか桐生さんの言い方、カッコイイ……。

 やっぱり最初の印象通り、クールっていうか……ちょっと不思議なオーラも感じるけど、カッコイイなぁ。


「まっ、いっか。言っても。あのさ、センパイ。実はあのバカ――」


 “バカ”と言って指を差した方向にいるのは、私達の残りの注文を運んで来る司さんだった。


「――俺の兄貴」


 へぇ、そうなんだ。


 ……。

 …………。

 ………………えっ?
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