桃の花を溺れるほどに愛してる
「立てます?無理はしない方が……」

「これくらい、平気ですよ。……伊達に暴力を受け続けてきたわけじゃありませんから」

「はぁ……そうっすか」


 今までに何度も殴られ、骨が折れたことだってあった。

 でも、これで桃花さんを守れているんだって思うと嬉しくて、桃花さんのためなら、何度だって暴力を受けても構わないとさえ思う。

 桃花さんを守るためなら、自分の身体を全部差し出してしまっても構わないんだ、僕は。


「それじゃあ、神代センパイのいるところに案内す――っと、あっぶねぇ」


 吹っ飛ばされた男は立ち上がり、聖くんに向かって拳を突き出してきたのだけれど、聖くんは間一髪のところでそれを避けた。


「クソガキがぁ……っ!!!裏切ったのかっ?!」

「裏切るも何も、最初からあんたの味方じゃないですってば」

「こんのっ、クソガキがぁぁぁあっ!!!」


 こめかみに青筋をたてた男は、怒鳴り散らしながら、また聖くんに向かって拳を突き出してきた。

 しかし――聖くんはそれを軽々とかわし、男の足を引っ掛けて転ばせた。


「こんのぉぉぉおっ!!!」

「はぁ……。しつこいなぁ、あんた。せっかく手加減してあげているのに、本気を出しちゃっていいわけ?」


 ここから聖くんの表情を見ることは出来なかったが、そう言った聖くんの声は驚くほどに冷酷で……男は、顔面を蒼白させてしまっていた。
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