桃の花を溺れるほどに愛してる
「俺さ、自慢じゃないけど、ケンカして負けたこと……1度もないんだよねぇ……。本気を出してもいいなら、遠慮なくあんたのことをぶん殴っちゃっても、いいんだよねぇっ?!」

「ひぃ!すみませんでしたぁっ!」


 さっきまでの威勢はどこへやら、男は一目散に廃病院の出入り口の方へと逃げていった。

 それにしても、聖くん、怖すぎる。ケンカで負けたことがないって……どれだけ強いんだろう、この人は。


「あっちゃー」

「……どうしたんですか?」

「ここまで乗ってきた車、さっきの男の車なんっすよ。これで山をおりて家に帰るまで時間がかかるなぁーっと」

「僕の車で送っていきましょうか?」

「あっ、そっか。天霧さんもここにいるっていうことは、車に乗ってきたっていうことか。助かるっすわ~」


 よし、桃花さんを助け出したあとは僕の車で山をおりることにしよう。


「そうだ。警察の方にも言っておいた方がいいかなーっと。……んぁ?」


 聖くんはおもむろに自分のポケットから携帯電話を取り出し、ディスプレイを見たのだが……。


「圏外っ?!」


 僕の携帯電話同様、聖くんの携帯電話もやっぱり圏外のようだった。
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