桃の花を溺れるほどに愛してる
「……よし、それじゃあ――天霧さん。俺、ちょっと電波の届くところまで山をおりてくるっす」

「えっ?」

「さっきの男もそうっすけど、榊センパイのやっていることも犯罪ですし、ちゃんと警察に来てもらった方がいいと思うんっす」


 まぁ、確かに……。


「正直、天霧さんを1人で榊センパイのところに行かせるのは心配なんっすけど……」

「ああ、それに関しては大丈夫です。自分の愛する人は、たとえ何があっても守り抜きますから」


 僕が真剣な眼差しを向けながらそう言うと、聖くんは一瞬だけ驚いたように目を見開かせたけど、すぐにニカッと笑みを浮かべ……。


「まっ、天霧さんなら大丈夫っすかね。神代センパイたちの部屋は、この廊下の1番奥の右側の部屋っす」

「分かりました」

「気をつけてくださいっすよ!」


 聖くんは携帯電話を片手に持ち、走って廃病院をあとにした。

 ……さて。僕もはやく、桃花さんのところへ行かなくては。何かがあってからでは、遅いのだから。

 僕はズキズキと痛む身体に鞭を打ちながら、必死に廊下の1番奥まで走った。

 この右側の部屋に――ん?中から桃花さんの苦しそうな声がする。


「桃花さんっ?!」


 僕が急いで扉を開けると、中の悲惨な様子を目の当たりにした。

 首を絞められて苦しんでいる桃花さんと、ギリギリと首を絞める榊くんの姿が、そこにはあったんだ。
< 302 / 347 >

この作品をシェア

pagetop