桃の花を溺れるほどに愛してる
 激痛が頭を駆け抜ける。

 あたたかい液体が顔を伝って落ちていくのが、感触で分かった。

 それを見た桃花さんが、泣きそうになっていることを視界の隅で捉えた。

 はは……桃花さんを心配させないようにしなくちゃいけないのに……不安にさせてどうするんだ、僕の馬鹿野郎。

 僕は、殴られる前と変わらない表情を保ったまま、顔をあげた。


「! なん、で……!あんなに力強く……頭を殴ったのに……!うわぁぁぁあっ!!!」


 1発、2発、3発と、僕は榊くんに、鉄の棒で身体を殴られた。

 しかし、痛みなんて感じていないといった表情で、僕は榊くんに向かって手を伸ばす。

 再び振り上げようとする鉄の棒を間一髪のところで掴み、思い切り自分の方へ引っ張ると、いとも簡単に榊くんの手から奪うことが出来た。


「ひっ……」


 怯えた目を浮かべる榊くんに、思い切り顔を近付けさせる。そして、そのまま、僕は口を開いた。


「僕は彼女から離れろって……最初に言ったよな?忘れたとは言わせない」

「あ……ぁ……あ……」


 榊くんの衿元を掴み上げると、そのまま勢いよく壁の方へ放り投げた。

 全身を強打した榊くんは、やがて丸くなったまま動かなくなる。

 僕は榊くんから奪った鉄の棒を部屋の隅の方に投げると、急いで桃花さんのもとへ駆け寄った。
< 306 / 347 >

この作品をシェア

pagetop