桃の花を溺れるほどに愛してる
 それを見て、カッと頭に血がのぼったのが自分でも分かった。

 許せない……。桃花さんの綺麗な肌に、こんな醜い縄の跡が残ってしまうだなんて……。この跡、綺麗さっぱり消し去れるだろうか?


「ありがとう、春人」

「いえ」


 よろめきながらも立ち上がった桃花さんは、僕の信じられないことに、自分の制服をビリビリと破いた。


「桃花さん……?!」

「春人、ちょっとしゃがんで」

「え、えっ、ですが……」

「いいから」


 言われるがままに、僕がその場にしゃがみ込むと、桃花さんは破いた制服の一部を、僕の頭に巻いた。


「?! だっ、ダメですよ!桃花さんの大切な制服が……っ!」

「また買ってもらうから大丈夫よ。制服はこの世にたくさんあるけど、春人の身体は1つしかないんだし、大切だもん」

「ですが……っ!」


 だとしても、桃花さんにこんなことを煩わせてしまうだなんて……彼氏としても、男としても失格だ。


「いいの!私がこれで納得しているんだから、それでいいの!それより、早くここから出よう?春人の怪我、ちゃんと消毒して処置してもらわないといけないし……」

「そう、ですね。僕のことはともかく、桃花さんの腫れを引かせないといけません」

「だから、私の方はそこまで酷くないから大丈夫だって」

「ダメですっ」


 僕の中で、優先度は圧倒的に桃花さんの方が上だ。……僕なんて、それこそ最後で構わない。
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