桃の花を溺れるほどに愛してる
「あっ、ありが、と……」


 笑顔が1番素敵とか、今まで言われたことがないから、不覚にも少し照れてしまう。


「あっ、それで、鍵のことなんだけど……」

「はい。桃花さんが返してほしいとおっしゃるのなら、返しますね」

「えっ?!」


 あんなに没収されるのが嫌そうだったのに……いいの?渡すこと。

 それとも、春人は“大人”だから、没収されるのが嫌だという気持ちを心の奥に押し込んで、心変わりをしてみせた……とか?


「やっ、やっぱりナシ!没収はナシ!」

「え?でも……」

「ナシって言ったらナシなの!その鍵は春人が持っていて。お守りみたいな?でも、むやみに不法侵入はしないこと!」


 私がそう言うと、春人は嬉しそうに笑ってお礼の言葉を口にした。

 なっ、なんだ。やっぱり鍵を没収されるのは嫌だったんじゃん。

 しょうがないから、むやみに不法侵入しないという条件付きで鍵の所持を許可してあげるわよ。
< 33 / 347 >

この作品をシェア

pagetop