桃の花を溺れるほどに愛してる
「そっ、そう……」

「――あっ。ハイ!これですべて取り外しましたよ!」


 春人にそう言われ、私は上の空からハッと我に返る。

 机の上に目を向けると、見たことのない機械たちがごっちゃりと並んでいた。

 監視カメラ――小型のカメラは、テレビで何度か目にしたことはあるけど、盗聴器を目にするのは初めてだ。

 テレビの撮影用のカメラだってかなりの高額だと聞いたのだから、この小型の監視カメラだってそれなりの値段がするんじゃないだろうか。

 盗聴器の値段は分からないけど、っていうか、実際に売られているところを見たことはないけど、そんな盗聴器や小型の監視カメラがこんなにたくさん……。

 これほどの機械を集められる春人って、実はかなりのお金持ち……?


「ん。ありがと」


 ……こういう類のモノは設置されていないのがフツーなのだのだから、取り外してもらったからといって、お礼を言うのはおかしいような気がするけどね。


「んじゃ、用も済んだことだし、さっさと帰って」

「そうですね」


 ……っ。

 最初からそういう話だった気はするけど、こう……あっさりと承諾されると、なんか寂しいというか……調子が狂うなぁ……。

 いやっ、はやく帰ってもらえることに嬉しい他ないんだけどね?!

 帰ってくれてバンバンザーイ!みたいなっ?!
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