カリス姫の夏
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遠くに函館の夜景を臨みながら、船の前方に視線を移すと、吸い込ませそうなほどの深い闇が海と空の境界線さえ消し去りどこまでも奥深く続いていた。
光害と無縁な闇に、不思議なほど星も月も見当たらない。今日は雲に隠れて、休日を満喫しているのだろうか。
フェリーは、残り少ない夏休みの思い出作りに訪れた観光客でいっぱいだった。甲板にも若いカップルや家族連れが、遠ざかる夜景となんの変化もない漆黒の海を見に来ていた。
「もっと遅い時間なら、イカ釣り船の灯りで綺麗なんだけどなぁ」
などと博識を披露する彼氏。
「えーー?マジーー?
みたかったーー」
なんて身をくねらせて甘える彼女。
カップルの会話を横で聞きながら、私は独り海を見ていた。暗闇に吸い込まれないよう、甲板の手すりに、しがみつきながら。
「あっ、莉栖花さん。
ここにいたんですか?」
藍人くんの声に左側を見ると、細身で長身のシルエットが近づいてきた。私は返事もせずに、手すりに身をあずけ、再び海を見た。
私の横に立ち藍人くんは「寒くないですか」と尋ねたが、私は小さく首を振ることしかできない。
そして、2人は申し合わせたように押し黙った。2人の間に漂う沈黙は心地よく、これからの関係を暗示しているかのようだ。
遠くに函館の夜景を臨みながら、船の前方に視線を移すと、吸い込ませそうなほどの深い闇が海と空の境界線さえ消し去りどこまでも奥深く続いていた。
光害と無縁な闇に、不思議なほど星も月も見当たらない。今日は雲に隠れて、休日を満喫しているのだろうか。
フェリーは、残り少ない夏休みの思い出作りに訪れた観光客でいっぱいだった。甲板にも若いカップルや家族連れが、遠ざかる夜景となんの変化もない漆黒の海を見に来ていた。
「もっと遅い時間なら、イカ釣り船の灯りで綺麗なんだけどなぁ」
などと博識を披露する彼氏。
「えーー?マジーー?
みたかったーー」
なんて身をくねらせて甘える彼女。
カップルの会話を横で聞きながら、私は独り海を見ていた。暗闇に吸い込まれないよう、甲板の手すりに、しがみつきながら。
「あっ、莉栖花さん。
ここにいたんですか?」
藍人くんの声に左側を見ると、細身で長身のシルエットが近づいてきた。私は返事もせずに、手すりに身をあずけ、再び海を見た。
私の横に立ち藍人くんは「寒くないですか」と尋ねたが、私は小さく首を振ることしかできない。
そして、2人は申し合わせたように押し黙った。2人の間に漂う沈黙は心地よく、これからの関係を暗示しているかのようだ。