カリス姫の夏
*****

快適な高速道路とは打って変わって、一般道は大渋滞。早朝到着を暗に計算していた予測を裏切り、地元とぎりぎり言える場所に到着したのは朝9時も過ぎたころだった。


「吉元さん。
どこまで送りますか?」

一晩中運転していた石井さんに、悪魔の華子さんも良心が痛んだのか
「あっ、そこの駅まででいいよ」
と、地下鉄の駅を指差した。


最後まで人の良い石井さんは駅入り口に車を付けると
「じゃ、お疲れさまでした」
とねぎらいの言葉をかけてくれる。

「ありがとね」とさして心のこもってしない言葉を発する華子さんをフォローするように、私は何度も石井さんにお礼を言い、立ち去る車を最後まで見送った。


「じゃ、莉栖花さん。
送りますね」
と藍人くんは勇んだが、華子さんは突き放した。

「かいわれ、あんた先帰ってな。
子リスはあたしに付き合って」


「これから⁈
眠いんですけど……」
と、私。


「えー?!
じゃあ僕も一緒に行きます」
と、藍人くん。


けれども、華子さんは私を無視し、藍人くんににじり寄った。

「オ・ン・ナの話があるのよ」

意味深な言葉を鼻にかかった声で浴びせられ、純粋な少年は従うしかない。


後ろ髪引かれるように何度も振り向く藍人くんの姿は、駅に消えて行った。


藍人くんを見送ったというより、付いてこないことを確かめ、華子さんはバス停に向かった。「どこに行くのか」という私の問いに返答はない。


華子さんの行動が未知なのは今に始まった事ではない。そんなのには、とっくの昔に慣れっこの私だが、郊外の端っこに向かうバスの終点で降り到着した場所は、さすがに想像の域を越していた。


「えっ?
釣り堀?!」
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