Doll‥ ~愛を知るとき


呼吸が荒く、胸が苦しい。

咄嗟に右側を見た。

誰もいない。

消灯した部屋の暗い壁があるだけ。


一瞬、自分が何処にいるのか分からなかった。


─ 入院してたんだ‥


気付いて、また哀しみを感じる。

毎日あたしの横で眠っていた樹は、ここにはいない。


体の奥が冷たくなるような感覚は、ずっと治まらないまま。

なのに、全身を激しく血液が駆け巡っていた。


── 樹‥


直ぐには全てを理解出来ない。

夢の中の樹の顔が脳裏に焼き付いている。


─ イヤだよ‥


押し殺した嗚咽が病室に低く響ていた。


 
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