Doll‥ ~愛を知るとき
 

失った記憶は、恐らくショックが原因だろう。

同情を含んだ視線を向けて、医師は話していた。


「ご家族と暮らすことが刺激になって、思い出すこともあるかもしれませんね。」


─ 思い出す必要がないから、思い出さないだけ ─


ふと樹の言葉が脳裏を掠め、胸が締め付けられる。

きっと、思い出さない方が彼には都合が良かったんだ。


「退院していいですよ。」

「ありがとうございます。」

不安を胸に医師に軽く頭を下げ、診察室を出た。

担当の看護師が廊下で待っていた。


 
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